じいちゃんとくまたパン

これ、くまたパンってゆうんです。
『秘密のケンミンショー』観てたら懐かしくなって、検索してみたらありました。
地図を開いて涙が出ました。
じいちゃんちのすぐ近くなんです。

これがまぁ、鬼甘！な饅頭で。
饅頭？って言うか、皮の部分が固いパンなんですよ。
で、中にアンコが入ってて回りはお砂糖がまぶしてあって、
渋いお茶がないと、子供でも食べられません。（笑）
でも、たま〜に思い出したようにむやみに食べたくなるシロモノなんですわ。

超個人的な話で恐縮なので、読み飛ばしてくださいね。
このくまたパン、うちのじいちゃんの大好物だったんです。
（100歳ちょっとまで長生きして帰幽しましたが）
小柄でつるっぱげで滅多に喋らないお地蔵さんのようなじいちゃんでした。
じいちゃんの好物は、お砂糖でまぶした梅干しと、このくまたパン。

じいちゃんは昔、一時、無声映画の時代、
映画館でバイオリンを弾いておったです。
その話を聞いたのは、不思議に私一人だったんですよね。
「初めて聞いた！なんでそんなこと知ってんの？」
従姉妹達にヤキモチ妬かれて大変ですた。
私は中学の頃、ギター引いたりしてたんで、たまたまじいちゃんに
音楽の話でもして、盛りあがったんだと思います。

じいちゃんの親？だったかな？
いわゆる戦争孤児で・・第二次世界大戦でなくて日露の方ね。（笑）
大した財産があったそうですが、全部他人に持ち逃げされたそうです。
そんなわけで、ず〜〜っと貧乏で。貧乏子沢山の典型ね。
ばあちゃんは面白い人で一族のスターでした。
ばあちゃんに可愛がられる事が、孫のステイタスみたいな所があってね。
逆にじいちゃんは存在感の無い人で、無口この上ない。
煩いこと大嫌い。騒ぐといつも怒られてましたよ〜。
一族が揃っても、いつも隅っこでポツンとしてんです。
そう言うじいちゃんが、わしはいつも気になって気になって。
なんでうちはばあちゃんの方がエライのか？
不思議で不思議でね〜〜。

さぁそのじいちゃんなんだけど、数年前、従姉妹が漏らした話がある。
「本宅（本家）の集まりでお酒が入るとさぁ、じいちゃんの兄弟が
戦争で何人敵を殺したとか、そう言う自慢話になるのがイヤでさぁ。
でもその時、チラッと聞いたんだけど、うちのじいちゃんは
戦争行かなかったんだって。なんでか？さぁ？そこまでは言わなかった。」
この話が引っかかってね。
本人に聞いてみたかったと痛切に思った。

もし、じいちゃんが戦争へ行くのがイヤで、
何かズルして兵役を免れたのだとしたら、じいちゃんがいつも隅っこで
小さくなっている理由が、それだったんじゃないか？
そんなふうに思ったから。
そして、９人も子供がいながら、誰一人、親を看取る子供に恵まれなかった事も、
ひょっとしてバチでも当たったのか？
悲しい気持ちになってしまって。

わし、じいちゃんが一人になった時、引き取りたかったのよ。
でも、わしも小さな子供を抱えて、じいちゃんを引き取れる状態ではなくて、
切なかったんだす。
母親の面倒はイヤ！なのに（笑）じいちゃんの面倒なら見たいと思ったです。
無理してでも、引き取れば良かった・・・。
無理か・・・。

じいちゃんのお墓参りには、必ず「くまたパン」を買って供えるんだと
地元の従姉妹たちが言っていた。
申し訳ないことに私はまた福島から遠く遠くなってしまった。
毎日万霊供養はしているけれど、今度、くまたパンを取り寄せてお供えしようか。
インターネットがあるからそれも可能なんだな・・と、
今日はしみじみ、しみじみしました。